サムと共にお部屋で一息ついていれば、硫黄の匂いがして、温泉宿なんだなぁと改めて思った。
部屋で硫黄の匂いを嗅いだ記憶があまりなく、きっとここの温泉は凄いのだろうな?と期待しつつ散歩に出る。
初めて来る場所は散歩するだけでも楽しいのだが、この辺りは保養所や別荘がある閑静な所なので、のんびりゆったりと歩くことが出来る。
紅葉している木々の中、落ち葉を踏みしめ景色を楽しみ、スキッパーキはカサカサ落ち葉の上を探索するように軽快に足を運んでいる。
楽しい散歩を終え宿に戻ってお風呂を頂きにサムと一緒に暖簾をくぐる。
予想よりも広い脱衣所は明るくスッキリしている。引き戸を開け入ると、硫黄の匂いが立ち込めている温泉は濁り湯だ。
ペット用は使う人が対応するから空なのが見えた。それなので、ペット用のお風呂に栓をして温泉とお水を入れにかかる。
その間サムも一緒に風呂場に入るもウロウロクンクンしているだけでお湯には見向きもしない。昔は湯船に浸かっていると直ぐ側まできて、あまつさえ入ってしまうのではないのかと思うぐらい興味深く見ていたのに、今此処にいるスキッパーキにはその様な面影は全く見られず、湯船全く興味ありません体だ。
これはもう温泉に浸かる事など喜びそうもないので、残念ではあるがいつも通りサムは脱衣所で待ってもらいうことにした。
結局念願?だったサムと一緒に湯船に浸かり裸の付き合いは実現できず残念。企画倒れに終わってしまった。
温泉から上がると何故かサムがクンクンクンクンと体をしつこく嗅いできたのだが、今迄湯上がりで体の匂いを嗅ぐということはなかったので、何だろう?とこの時は思っただけだった。
吹き抜けのダイニングで美味しいお食事を頂く間サムはいつもの如く足元で静かに待っていてくれる。そしてお食事タイムが終われば、サムとのプチお散歩タイム。
既に日は沈んでいるので、外はほとんど明かりが無い。静かな物音もしない暗い道を懐中電灯で照らしながらの散歩するのだが、スキッパーキは楽しそうだ。
食後のお散歩はお泊りの醍醐味だものね。半分は待ってくれていたご褒美でもあると思うけどね。サムはどっちだと思うのか教えてほしい。
朝は薄明かりの中の散歩をしてから、初めてドッグランを使わせてもらった。
ドッグランに行くには、ダイニング横の出入り口を利用するのだが、なんとなく人がいる時は遠慮してしまい、誰もいない今ドッグランへ出てみた。
宿情報としてそれほど広いドッグランではないようだった事もあり、スキッパーキが走り回るには物足りないのではないのかと勝手におもっており、きっとサムはふらっと探索する程度で興味持たないだろうと思っていたのだが、ドッグランに出たサムは予想に反して、もの凄く楽しそうで、上手にドッグランを走り回った。
その楽しそうに走る様子は久しく見ていなかったので驚くとともに嬉しくもあり、サムにとってドッグランの広さは全く関係無いという事を始めて理解した。
何でも良かれと思ってやってはいるのだけれど、上手く気持ちが伝わっているといいなとも思いながら、本当に楽しそうに、自らプチ全力疾走しながら、楽しいよと語りかけてくるようにそばに来ては、ドッグラン全体を駆けているスキッパーキから目が離せない。
いつの頃からか大人になったスキッパーキは子供の時のようにただがむしゃらに走る事が少なくなってきたので、サムの楽しそうな走りを見ることができたのが、本当に嬉しい。一番のご褒美だ。
その後宿を出てから、自分でもわかるぐらい体から硫黄臭がしたので、お風呂上がりにサムが体の臭いを嗅いでいたのは、体についた硫黄臭に反応していたのかとやっと分かった。
流石スキッパーキ匂いに敏感(動物皆鼻が良いものね)と思うと同時にサムが温泉に入らなくて本当に良かったとも思った。
宿にいるときには、宿全体が常に硫黄臭がしていた為気が付かなかったが、離れるとはっきりと硫黄の匂いが分かる。
そういえば、温泉の説明に「犬」を温泉に入れると2,3日硫黄の匂いがするとあったのを思い出したのだが、人間もそうだとは知らなかった。「毛」に匂いがつくからだろうと思って勘違いしていた。たった一度の入浴で臭いが染み付くとは硫黄おそるべし。
今まで温泉に入って臭いがつくことはなかったので、初めての体験なのだが、臭いが消えるまで、温泉に入ってもいないのに微かだが硫黄の匂いがするのは一寸微妙だった。