疲れ切っているであろうスキッパーキを横目に電話を掛ける。
呼び出し音が聞こえ、気持ちが焦る。早く、早く出て下さい。お願いします。電話に出て下さい。
時間にしては大して経っていないのだが、やっと繋がってくれたと思った。そして、受付さんだろう電話に出てくださった方に、今のサムを救ってほしく、今日一度伺った事とどうしようもない現状を先生に伝えてもらうようお願いした。必死だ。
暫くして、先生から診療時間外になるのに、今から来てもいいと言う返事がもらえ、安堵した。
駄目であれば、夜間診療しているところに行かねばならないと思っていたので、嬉しかった。午前中に診てもらった時には元気だったのが(正確には診療中だけ元気だった)何だったのかと思うぐらいの急変が悲しい。
良くお医者さんに診てもらう時だけ何ともなくなると言うことがある。そしてそんな時は決まって診療していない時間帯の夜や、次の日に悪化して、何のためにお医者さんに行ったのだろうと思うことがあるがあるが、まさにそれだ。
ごめんね。ごめんねサムと謝りながら、できるだけ優しく優しくぐったりしているサムを抱え車に乗せた。本日二度目の道を行く。
早くても20分はかかる。道路が混んでいれば倍近くかかる。
サムは押し黙って後部座席にいる。もうすぐだからね。もうすぐ。早く。早く。気持ちだけが急く。
このままで、我慢できているうちに病院に着いて欲しいと思った矢先、突然サムは泣き叫び出す。
サムの目が、表情が辛い。泣き声が、叫び超えが車内に響き刺されるように痛みを感じる。
ごめんね。もう少しだから、もう少しだから、そしたら痛みとってもらえるからとサムに語る事しか出来ない。
病院に着きサムを連れていくため触ると泣き叫ぶ。ごめんねサム。ごめんね。なんとかの一つ覚えの様に謝ることしか出来ない。
叫びがおさまり抱っこして病院に入る。受付ではやり取りをしている人がいた。
気持ちが焦っているのでそのやり取りがなかなか終わらず、受付だけでもして欲しいと心の中で思い、その方が終わったら直ぐに受け付けてもらおうとしているのに、やたらと質問している様で受付から離れてくれない。
すぐ近くに先生はいらっしゃるのに、来ていることを伝えることが出来ない苛立たしさの中、サムがまた叫び出したので、ソファの上に下ろしたが、サムは痛みにじっとしていられないようで小刻みに震えながらソファの上を動く。そんなサムに出来ることは落ちないようにガードをすることだけだ。
静かな待合室にサムの叫び声が響く。耳を塞ぎたくなる大きな大きな響き渡る叫び。だがさすが病院なので誰も動じることはない。
サムの様子に受付するのも忘れていると、いつの間に人がいなくなったのか声をかけてもらい先生にお伝えしますのでお待ちくださいと。診療室へ向かってくれたので少しだけホッとした。
直ぐに呼んでもらえるかと思っていたのだが、呼ばれることはなく待合室で痛くてじっとしていられないサムと暫く過ごした。
時間外だから、もう誰もいないかと思っていたのだが、診療室のドアが開いてダックスちゃんが出てきた。とても大人しく小さなダックスちゃんだ。呼ばれなかった理由は診療中だったからなのかと分かり、焦りが少し薄らいだ。それからすぐに、先生と看護師さんが診療室から出てきてサムに駆け寄ってきて下さった。
辛いだろうから、ここでサムを診てくれる事と、まずは直ぐにサムに注射をすると言うことを話して下さった。