もうすぐ良くなる。絶対に良くなると呪文のように祈っているのに、その後もサムの様子はあまり変らずで、何時もなら「寝る」のに寝ることもしない。
散歩、遊び、食事以外殆どの時間を寝て過ごすのに、寝ていない。横にならない。
今考えると寝ることさえできない痛みだったのだろう。
きっとサムは訴えていたのだろうが、その思いは残念ながら伝わらない。ただサムの体調が良くなっていないことに対しては疑惑は持っていた。
だからこそ、触っただけではわからない所で何かが起きていたらと不安にかられ、もし・・・などと変なことが頭に浮かぶので、このままでいることが出来ず、診療開始時間に着くようにサムを車に載せて昨日通った道のりをまた走った。
その際サムは大人しくされるがままのスキッパーキだったのだが、病院に着きサムを降ろすと家にいた時と雰囲気が違うし、尻尾が上がっている。
元気になった？体調良くなった？もしかして入れ替わったと思うぐらい、車に乗る迄のスキッパーキと降りた眼の前のスキッパーキが別人もとい別犬じゃないのかと思うぐらいの変わりように驚いた。
もしかしたら朝飲んだ薬が効いてきた？そうだとしたら、それはそれでとても嬉しいのだが、夜中から先程までのサムの様子は普通ではなかったのも事実なので、そのまま受付で診察をお願いして待合室で待っていた。
先生に診てもらう時には尻尾を振るぐらい明るく元気になっていたので、良かったと思ったのだが、先程までのサムの状況を話し、念の為レントゲンと血液検査を行ったが問題という問題は特になかったのようなのだが、本来１日効くはずだった薬が効かなかったようなので、薬が合わなかったのだろうということで、違う薬に変えて頂いた。
とても信頼できる先生なので、先生にふとサムに薬を飲ませるのが難しい事を相談したら薬を包むものがあると教えて下さり、そのサンプルをサムに食べさせてくれようと口元に持っていってくれたら、サムはパクっと食べたので、少し驚いたが、サムも先生を信用しているし、口にする元気も出てきたのかと嬉しかった。そして、投薬補助トリーツによって負担かけずにサムに薬を飲ませられるので、二重の安心を持ってお医者さんを後にした。
薬が効いたから、後は回復するだけだと思うと気が楽になり安心した。サムも寝れているようだし良かったと思っていた。
夕方、大分良くなったはずのサムとの散歩は、サムの様子を窺いながらゆっくりと歩く。
本調子ではないから、散歩というよりも用を足してくれたら直ぐ戻るつもりでいたのだけれど、用を足すどころではなく、もう帰ると伝えてきた。
お医者さんにいた時が一番元気だったけれど、あれから半日も経っていない。もう治るだけだと思っていた。
それなのに、サムの様子がおかしくなってきている？薬が効いたはずじゃなかったのか？一気に不安が膨らむも、体を休めれば、寝れば多少なりとも良くなると思い込もうとした。ゆっくりではあるが、慎重に足を運んでいるサム、後少しで家に辿り着く。もう一踏ん張り。目の前、数歩歩けば、門という時だった。突然今迄聞いたこともない「声」をスキッパーキがあげた。
「悲鳴」
「咆哮」
「慟哭」
小さな体のどこからそれほどまでの声を吐出させるのか、吐出さなければ壊れてしまうほどの何かがあるのか。
サムは泣き叫ぶ「絶叫」している。
初めて聞くスキッパーキの腹の底から助けてと言っているように絞り出しているような、大きい、とても大きな泣き声。泣き叫ぶ姿。
今迄これ程凄まじい叫びを聞いたことがない。
スキッパーキのと言うよりも、今迄会ったワンコ達から一度も聞いたことがない苦痛に満ちた咆哮。
単に吠えている軽いものではない、絞り出され響き渡る苦痛の音。