スキッパーキはリラックスして後部座席で微睡んでいる。
尤もサムにしてみれば、相手してもらえるわけでも、何かやることがあるわけでもないから、つまらないことだろう。
そんな何でも無いサムを垣間見るのも幸せだと思ってしまう親馬鹿、犬ばか、サムバカだ。
高速を降りて一般道をひたすら走り目的地に向かう。はじめての所、初めての道。
ふとサムを見ると、窓にへばりついて外をみている。
はじめて見る景色、知らないところだから記憶しようとしているのだろうか?
昔ならそんなスキッパーキの行動に対しても、何も思わなかったのだが、犬の記憶の素晴らしさを知るようになったこと。
その記憶の素晴らしさを目の前のサムが立証していたので、今の見ている行動は覚える為としか思えない。
人間が思っているよりも犬の能力は素晴らしいものだ。
それぞれのポテンシャルや得意分野他差はあるが、それは人間とて同じこと。
犬だから種が違うから理解できない事もあるけれど、犬だから出来ることがあり、優れている能力を発揮する。
おそらく今スキッパーキサムは凄い勢いで記憶の図書館に保管しているのではないのだろうか。
小雨だが雨は降り続いている。これでは外で遊ぶわけにもいかない。だが幸いにもこれから行く所には室内ドッグランがある。
過度な期待はしていないのだが、雨降りの時にも遊べる施設があるのは物凄くありがたい。
目的地に着いてフロントで説明を受け、室内ドッグランの場所を教えてもらい、早速車で向かう。
思っていたよりも遠く、距離があることが分かって、ここの施設が想像よりも大きいことを実感しワクワクする。
まさか室内ドッグランが車で移動しなければならないぐらい離れているとも思っていなかったし、フロントの対応がとても感じ良かった事も想定外だったので、どんどんテンションが上っていく。
ドッグランの駐車場には既に車が数台止まっていたので、まずは様子を見てからと思いサムを残し体育館の様な建物のドアを開ける。
予想より広く、オーストラリアンラブラドゥードルが数匹いて、黒のラブラドール、他数匹の小型犬がいて思った以上に遊んでいる。
遊んでいる様子を暫く眺め、皆特に喧嘩もせず、勝手に?遊んでいるようなので、サムを連れてこようと戻ろうとした時、「グレゴリー」と言う声を聞いた。グレゴリー?聞き覚えがあった。以前初めて会ったオーストラリアンラブラドゥードルの名前。
もしかして、もしかしたら会ったことがある?記憶を必死に呼び戻しながらサムのもとに着いた。
その時、駐車場に止まっている車を何気なく見たら、何となく見覚えのある車のような気がしてきて、前に会った事がある方達ではないのだろうか?と思ったりしたのだけれども、前に会ったところとは全然違う場所だし、そんな偶然は無いよね?等と自問自答しつつ、スキッパーキを連れ室内ドッグランに戻った。