サムといくつかのトンネルを通った。
トンネル自体はそれ程長くはないので、ちょっとした散歩な感じで歩いていたのだけれど、サムの様子がなんだかおかしい。
何かを訴えているようなのだが、何を訴えているのか分からず、また、動作もいつもと違って、立ち止まったりして、何かを伝えているようなのだが、サムが伝えたいその何かが全くわからない。
こんな時以心伝心できたら良いのにと思うのだが、特に体調が悪そうでも無いようだしと勝手に思い、そのままアプトの道を進んだ。
サムも訴えているのに、伝わらないから諦めたのか、いつもと同じ様な違うようなで一緒にあるき続けた。
時折止まって訴えていた様なのだが・・・
おそらくこの時もし気づいていたら、プチパニックで、あわあわしてあまり良くないことになったかも知れないので、ある意味気づかなくてよかった。気づけなくてよかったと思っている。
スキッパーキサムとトンネルを抜けきると、広場のような開けたところに出た。
朱色の鳥居が見え、鳥居と小さな神社を掃除している3人の方達がいた。
挨拶をして、日差しが強く、足元の砂利の照り返しも感じ、これは春ではない夏の日差しの様で、ここ最近温暖化と騒がれることもなく、エルニーニョ、ナニーニョをたまに聞くぐらいで、暑くなりそうですとか夏日なんて言葉より、「酷暑」熱中症に気をつけて、エアコンを入れてなどと言うフレーズを夏で当たり前、春でさえ聞かれる様になってしまった。
それぐらいこの日差しは強いものになっているのだろうな。等と既にハアハアしているスキッパーキサムを見ながら、ごめんねもう少し見させてね。と明るい日の光に照らされても廃墟的な雰囲気が漂う旧変電所を見上げ駅があった跡地に立ち寄る。
暑いからだろうと思っていたのだが、スキッパーキサムの様子がやはりおかしい。
ペタンと座って何かを訴えている様子なのだが、サムの訴えていることが全くわからない。
ごめんね。暑すぎる?トンネルを出たところの木陰に木の椅子とテーブルがあったので、水分補給を兼ねてやすもうね。
日差しは避けられたのだけれど、サムの様子はやはり変わらず、ペタンと座っている。
その座っている姿が、雰囲気が、サムの感じがいつもと違う。違うことしか分からなかった。
よく気をつけていればわかったかも知れないサムの行動。伝わることのない思いを抱いていてもサムはおとなしくただ黙って一緒に歩く。
時折訴えているスキッパーキ。いつもと違う物憂げな表情に思え、動きもシャープさがかけている感じで、どうしたの?と思える動きをしたりすることも。それは当たり前だよね。気がつけなくてゴメンね。
スキッパーキの全身まっ黒なところが好きなのだが、「黒」だったからこそ、それだからこそ余計気づけなかった。黒という色は本当に難しい。