クールコートを取り出して、スキッパーキサムに装着する。
クールコートを着るのは2回目で、着るというのではなく羽織るぐらいの感じなので
服がダメな裸族のスキッパーキもこのクールコートなら大丈夫だと前回一緒に散歩できたので
なんの疑いも持たず、日差しが強いからねとサムに語りかけながら、
大人しくしているサムにクールコートを着せた。
何となく大人しい感じのサムだけど、トコトコ歩くから既に暑いのだろうぐらいにしか思っていなかった。
その時は。
茶屋とは反対側の牧場に向かうと、いくつかの店舗が長屋のようにあったのだけれど、まだシーズン前で
全ての店がクローズしていた。避暑地はどこもそうなのかもしれないが、少し淋しい感じがしてしまう。
そんな事も全く気にせずスキッパーキサムはトコトコ歩く。
階段も軽く上がって行く、階段を登り終えると景色がよく見えてくる。
小さな小山の上に登った感じだが、更になだらかな上り坂が続いている。
周りは草原風の草と木があるだけで、道から逸れると滑り落ちそうな傾斜がある。
見晴し台の所まで、サムと遊びながら歩いて行くだけなのだがとても気持ちがいい。
視界の広さで気持ちも広くなる感じさえする。
見晴し台の所に来ると、屋根のある休憩所とここから見える山々の標高と山の名前が書かれた案内板があった。
パノラマと言うのはこの事なのかぐらいよく周りが見渡せる。登山をして山の天辺から一望するのとは全く別物で、
上から見下ろす景色ではなく、横から見るようで、奥行きというのか幅がある広い空間に立っているみたいだ。
柵がずっと続いているので牧場なのだろうが、牛一頭もいない。
やはり影も形も見えない。噂に違わずの牛がいない牧場が延々と続いている。
柵があり牧場だと知っているからそう見えるだけで、牧場だと知らなかったら、単に何も無い草原にしかみえない。
建物がないせいか風が吹き抜けて行く。
何処と無くスキッパーキサムは元気がない。
風のせいなのか、日差しのせいなのか、サムはあまり楽しそうに見えない。
ハイキングコースもあるようだけれど、景色堪能したし、風も日差しも強いから戻ろう。
何がある訳ではなかったけれど、滅多に見れない景色は気持ちがいい。気持ちがいいはずなのだけれど、
スキッパーキサムはそうでは無いらしく、普段の元気はどこに行ったのか、トボトボと歩いている。
サムの歩みがいつもと違う。
日差しと強い風のせいだと思っていたけれど、それだけではないようだ。
後にわかったのだが、トボトボとは言え歩いているサムだったから、直接の原因がこの時は思い浮かばなかった。