サムに万が一の事があってはならない。幾らスキッパーキとは言え踏み誤る事もある。
目の前に奥宮。本当に後少しだってところで最後の難関。階段が急。いや階段が無い。
しかも皆が昇り降りして踏みしめているから妙につるっとしている様な気さえする。
どうするサム?踏み外したら怪我するし、滑り落ちたらそれこそ大変な事になる。
ここは何とかするしかないと思い、サムを脇に抱え、必死に登っていく。
「火事場の馬鹿力」の様なものだろう。サムに何かあってはいけないという思いだけ、それだけで、片手にサム。片手にクサリ。と人間短時間であれば、結構できるものだ。
しかしもう少し緩やかにしてくれてもいいのではないのかな?と思いながらもサムと一緒だから頑張れるのであった。
ゼエゼエして、鎖付き階段を登り終わり踊り場的な所にいると、ある一点を見ている人達がいた。何かと思ったら視線の先には何かがいる様で近づいてみると「蛇」がいた。
周りの人達の様子によって蛇がいる事が分かったけれど、サムは、それよりも早く、どうやら気づいていた様だ。おそらく動いているという事で、目で追っていて何かいると知らせてくれていた。サムの場合シャイな事もあり、全て控えめなので、教えてくれていても動作だけだと、サム信号に気づくのが遅いのが、まだまだダメな所です。
それにしてもが、スキッパーキサム。ウォッチドッグ流石です。
特に害を及ぼさないと思ったのか、少し目で追ってはいたが吠えもせず大人しく傍らにいるサムに対して、食い入るように蛇を見続けてその場に釘付けになっていた。
蛇が珍しいから見ていた訳ではなく、この奥宮という場所で蛇に会えたから、普段とは違う思いで蛇の行方を追ってしまったのだ。最終的には石垣に身を滑り込ませて見えなくなったから奥宮に住う蛇のようで、奥宮という場所が場所だけに、神聖かつ此れからいいことが起こる吉報のような気がして嬉しかった。
さてなんとなく主のような蛇との対面できたので、テンションも更に上がり奥宮の境内に足を踏み入れると、結構賑わっている。荷物を置いて休憩をしている方達が沢山いた。
先ずはお参り。石灯籠の先にお犬様とお犬様の傍らに祠がある。お犬様の体形が今迄のお犬様と違って、とてもふくよかと言うかまあるい滑らかな感じだ。サムと一緒にお参りして、祠の周りを歩いてみると年月を感じさせる見慣れた細い体のお犬様が沢山いらっしゃる。それも大きさ等様々。あまり深く思わないで先に行くも、それほど広くはないので直ぐ裏手に行き着く。祠の裏手に行くと景色が凄い。パノラマだ。手前の山は緑が濃く、連なって見える山々は、遠くに行けば行くほど、白が重ねられているみたいにグラデーションがかかって見える。山の上にいるという実感は全くないけれど、サムと一緒にこの雄大な景色を見れる所に来たという事が嬉しい。
一休みして周りを見れば、周りの人達はみんなキッチリ山歩きの装備、服装をしていて、地図を片手に位置を確認して、此れから向かう所を目視していた。ここは山歩きルートの一つであり、場所確認するには良い所なのかもしれない。軽装でしかもスキッパーキ連れは一寸浮いている感漂っていたけれど、サムを見て可愛いねーと話しかけてきてくれるので、普通ならあまり話もしない様な所でも気軽に話が出来るのは、サム効果のお陰だ。
でも、この頃のサムはまだまだ頭に手を置かれそうになったり、正面から手をふっと出されたりすると、サッと避けてしまっていた。折角サムを可愛いねって触ってくれるのに、損をしている。デレデレ反応すればもっと可愛いがられるのに残念。
では戻る事にしましょうって、気楽に戻る訳にはいかない。何といっても、いきなりクサリつかまり降りだ・・・