ところがある日。何が原因か忘れたのだが、サムのした何かに腹を立て、サムを残し階段を下りた。
いつも可愛いと思うスキッパーキサム。
だけど大した事では無いが、たまに悪気がないのはわかっているのだ、カチンと来る事がある。
その日は、覚えていないくらいの事だったのだが、スキッパーキサムのもとを離れたのだ。
怒っていることはサムは分かる。何で怒っているのかはわからないかもいれないが、サムの視線は感じていた。
少し気分転換しようと階段を下りてた。サムが追ってくる気配はあったが、階段を下りれないから階段上にいるだろうと思っていたら、スタンカタンスタンカタン階段から音が聞こえる。
振り向くと、まっ黒なスキッパーキサムの表情は分からないが、人間でいうところの必死の形相をしているかの様に懸命に階段を下りてきたのだ。
???。な、な。にー?何!!!
そして90度カーブを曲がり切り、やだよー置いて行かないで!一人にしないで!ごめんなさーいとでも言っているように、すごい勢いで残りの階段を下りてきて、飛び込んで来た。
外の階段は比較的段差が小さい。歩道橋など段差はかなり小さい。だけど、家の階段は段差が大きい。このところ階段の上り降りで痛切に体力の衰えを感じているし、危ないと思う事もある。二足歩行の人間目線でそう思うのだから、小型犬のスキッパーキの目線から見たら崖や谷(ちょっと大袈裟)ぐらいの見上げ、見下ろした感だろう。
だがサムは上る事には何の躊躇も無かったので人間と同じく、上りより下りの方が危ないと分かっていたのかも知れない。だから降りる事に関しては積極的ではなかったのだろう。
それなのにサムは今危険を承知で駆け降りて来た。
もうそんなサムの必死の様を見たら今さっきまでの怒りが一瞬で吹き飛び、飛び込んできたサムを抱きしめる以外ない。
必死で置いて行かれまいとついてきた。初めての事だ。サムを置いて階段を降りる事によくあった。だけど階段上から覗き込んで待っているのが関の山だったから。まさか、階段を降りてくるとは思いもしなかった。
この時を境に、スキッパーキのサムは階段を躊躇無く一緒に上り降りする様になった。
日に何度も何度も。一緒に上り降りする。上り降りするサムを見ながら、常に気をつけてと言ってしまう。親バカ犬バカサムバカだ。
今日もスキッパーキサムは元気一杯エネルギッシュに階段を上り下りする。